「ブロックトレード」― TVドラマ『半沢直樹』とソフトバンクグループ
TVドラマ『半沢直樹』の第一話で描写された、電脳雑技集団によるスパイラル社買収計画に伴うスパイラル株式の買い付けは、半沢直樹が叫んだ時間外取引(ブロックトレード)という手法で行なわれました。
半沢直樹はじめ、その他のメンバー全員で株価のボードを睨み、株価が大きく動くのを見届けようとしていましたが、時間外での相対取引であるブロックトレードが、株価に大きな影響を与えず執行された場面は、大きな山場の一つでした。
『半沢直樹』におけるブロックトレードはM&A関連での取引でしたが、今年の5月下旬にソフトバンクグループ(SBG)が、手元の流動性を確保するための資産売却の一つとして、保有するソフトバンク(SB) 株式のうちの約3,000億円を売却したブロックトレードは、SBGのファイナンス面からの取引であり、ゴールドマン・サックス証券の主導により執行されました。
この東京市場における過去最大規模であったブロックトレードは、コロナ問題の真只中に、ゴールドマンを中心とした関係者のほとんどが、「在宅」からセキュリティーの強度を高くしたZoomとチャット等の通信手段を使ってリモートベースで全ての取引を実行するという、ゴールドマンにとっても初めての経験だったと報道されています。
このようなブロックトレードにおいては、売却される大量の株式を証券会社が引き受け、株価への影響を最小限に抑えながら、市場外で機関投資家に直接販売していきますが、その過程において、様々な要因で売却できなくなるリスクが存在します。そのリスクが顕在化した場合、証券会社は、売却できなかったポジション(株式)を、資金調達をしながら抱え続けなければならなくなります。
証券会社のファイナンス的な観点から言いますと、このケースの場合、ゴールドマンはSB株式の海外機関投資家への販売力に加え、SB株式の売り手であるSBGに約3,000億円の流動性を供給し、自社のファイナンスのリスクをマネージしながら、SBGからSB株式を引き取った構図の取引だったとも言えます。
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