どこに投資するべきか

「相原さん、何か良い投資先を教えてもらえませんか」

私が金融業界に長くいたからでしょうか。時々、若い世代の方々からこのような質問を受けます。

その際、私は必ず「まず、日々の費用をレビューしてコストを削減する。そして、本業であるご自分の仕事に集中して成果を出し、収入を向上させることを優先した方がいいですよ」とお答えします。

しかし、それは、多分私に質問してきた方の期待する答えとは全く違うのでしょう。いつも怪訝な顔をされます。そんな事を聞きたい訳ではないと。

銀行預金金利のほとんどが0.1%にも満たない現在の超低金利環境下、プロでも運用難に苦しんでいる中、金融に詳しくない方が金融市場において投資で継続的に成功する確率は、あまり高くないということを前提として考えなければいけません。

さらに、それを自分で情報を集めるなどの努力もせず、ただ人に聞いて決めるといった時点で、その投資行動自体に問題があり、良い結果は出ません。

一方、コスト削減においては、仮に月50万円の収入があった場合、無駄に飲みに行くことや、他の費用を抑えて、月2万円のコストをセーブできたとしたら、それは収入の4パーセントの節約/リターンとなります。今、為替や株式等で、リスクを取らずに4パーセントを出す金融商品はなく、また、これは、確実に自分がコントロールできるリターンです。

そして、最も重要な投資は、本業である自分の仕事に集中し、時間、労力、資金等の自分の経営資源を投下することです。その投資によって、今後働いている限り何十年間、キャッシュフローが確実に生み出されます。

仕事で成果を上げれば、今の収入の数十パーセント増、例えば、月50万円から70万円、そしてその努力が実れば、月100万円、200万円という数倍のキャッシュフローを長期にわたって安定して享受することも可能です。

これを企業経営においてファイナンス的な視点から捉えれば、主力事業へ経営資源を集中し、将来の高い成長への投資を優先して数十%、数倍の成長を求めるべきであり、まだ、あまり大きな金額でない余剰資金の金融商品への投資に時間と労力をかけるべきではないと私は考えます。

それが目的合理性にあった投資行動であることに、異論を唱える方は少ないのではないでしょうか。

相原 滋樹Shigeki Aihara

ジュピター・アンド・カンパニー株式会社 
代表取締役

ゴールドマン・サックス証券会社にて20年間勤務し、同社アジアパシフィック担当財務責任者を務める。2011年ジュピター・キャピタル・マネジメント株式会社(当時)を設立。RIZAPグループ株式会社財務戦略のサポートに従事し、2018年株式会社ウイルグループ執行役員CFOに就任。2021年株式会社お金のデザインChief Strategy Officerに就任。

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