女性のポーターに荷物を運んでもらうことへの違和感

日本国内のホテルにチェックインする時、とても違和感を感じることがあります。

それは、ホテルによっては、荷物を部屋まで運ぶポーターに女性のスタッフが多いことです。また中には、ほとんどのポーターが女性スタッフというホテルもあります。

その女性スタッフの方から「荷物をお部屋までお運びします」と言われても、私は丁重に断り、自分でスーツケースを運ぶようにしています。

私の周りの欧米人の友人・知人、そして日本人女性の友人の中にも同様に断っている方々がいます。

欧米では、女性が重そうなスーツケースや荷物を持っていると、近くにいる男性がヘルプするのが自然な光景ですので、ホテルでこのような経験をすることはなく、また、出張で滞在したアジアのホテルでも、このような記憶はありません。

ある時、エレベーターの中で、この疑問について女性のポーターに聞いてみると、ホテルの現場スタッフの就職希望者の多くが女性なので、このようなサービスの形になるのだと説明を受けました。

これは、雇用に関する男女平等やダイバーシティーなどの話ではなく、グローバルスタンダードという言葉がフィットするかもしれません。

一方、日本の旅館を訪れれば、女将、女性の仲居さんが主にお客様のお世話をする役割を担い、到着したお客様の荷物を預かり、客室まで案内してくれます。

旅館を訪れたお客様が「また来たい」と感じるかどうかは、ある意味、女将と仲居さんのサービス、「おもてなし」にかかっていると思います。また、旅館では「和の文化」が根付いており、上座に男性が案内されます。

ですから、この「旅館文化」に親しんでいる人々が、インターナショナルな環境での経験が少なければ、女性のポーターに荷物を運んでもらうことに抵抗を感じないのは、ある意味自然かもしれません。

これらのことを考えるとき、従業員の男女比や日本と海外の文化の違いの問題だけではなく、そのホテルのフィロソフィーに帰結するのではないかと、私は思います。そして、一定数のお客様に違和感を感じさせるサービスをしているという事実に対し、ホテル側がこの課題を解決する必要があるのではないかと思うのです。

相原 滋樹Shigeki Aihara

ジュピター・アンド・カンパニー株式会社 
代表取締役

ゴールドマン・サックス証券会社にて20年間勤務し、同社アジアパシフィック担当財務責任者を務める。2011年ジュピター・キャピタル・マネジメント株式会社(当時)を設立。RIZAPグループ株式会社財務戦略のサポートに従事し、2018年株式会社ウイルグループ執行役員CFOに就任。2021年株式会社お金のデザインChief Strategy Officerに就任。

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