360度評価の本質

以前、ある日本の大手企業の部長の方と会食した際、その方が社内で360度評価を初めて受けたというお話を伺いました。

そのお話の中で、私が大きく違和感を感じたことがありました。

それは、360度評価の結果をその方の上司からではなく、その会社が委託していた外部コンサルタントから伝えられた、ということでした。

どこまで外部に委託し、どこまで社内で行うかは、会社それぞれ事情もあるので、全て自社で行うべきだと強く言う立場にはありませんが、評価結果のメッセージのデリバリーは、最終的な評価者である上司が行わなければ、その価値、意味が大きく失われると思います。

私自身の経験からも、360度評価においては、当然のことながら、好意的なことだけではなく、同僚やチームメンバーの部下から、建設的であっても、厳しいフィードバックを受けます。

例えば、その部長の方が、厳しいフィードバックに対して意見や質問があっても、その相手が、責任の無い外部コンサルタントであれば、真剣な話し合いにならないのではないでしょうか。

その部下のことを一番よく知っている上司が、さまざまな角度から上がってきたコメントを、どのようにまとめ、どのようにデリバーするかが、上司の最も重要な仕事だと思います。

何故ならば、その一言一言が、その部下の人生を変えてしまう可能性があるからです。

もし、他の業務のために多忙なので、コンサルタント等、外部に任せているというのであれば、それは真に「人(ヒト)」を大切に考えていないということになります。

誰でも、あまり聞きたくない厳しいフィードバックを受ければ、感情としては、わかっていても反発する気持ちになるのは当然で、私自身もそうでした。

一方、一年間頑張ってきたチームメンバーである部下に対して、厳しいメッセージを伝える立場の人間も、仕事とはいえ辛いですし、真剣に覚悟を持って行う必要があります。

建設的な厳しいフィードバックは、その個人を批判することではなく、その人の次のステージへの成長に繋げていくことであり、それが、360度評価の重要な目的の一つです。

人事評価のための集計等の作業は、紙ベースからオンラインに移行し、現在はDX化が進んただことでそのプロセスはより効率的になり、その部分のマネジメント個人の負担は、軽減されてきています。

企業組織として、一年に一回の大事な時間を、チームメンバーである部下のために十分取ることが出来ない、ということはあり得ず、端的に言えば、人事評価の時間をその時優先順位を最も高くすれば、つまり、「人(ヒト)」のことを真に大事に考えているのであれば、出来ない理由はありません。

最後まで人間である上司がやるべき事は、チームメンバーである部下へ、その評価を伝え話し合うことであり、外部コンサルタントやAIロボットに任せる領域では絶対にないと思います。

相原 滋樹Shigeki Aihara

ジュピター・アンド・カンパニー株式会社 
代表取締役

ゴールドマン・サックス証券会社にて20年間勤務し、同社アジアパシフィック担当財務責任者を務める。2011年ジュピター・キャピタル・マネジメント株式会社(当時)を設立。RIZAPグループ株式会社財務戦略のサポートに従事し、2018年株式会社ウイルグループ執行役員CFOに就任。2021年株式会社お金のデザインChief Strategy Officerに就任。

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