ウエストポイントとリーダーシップ

映画「トップガン マーヴェリック」の1シーン。

「その説明で、家族を失った遺族は納得するのか?」

教官であるトム・クルーズ演じるマーヴェリックが、トップガンパイロットの任務遂行のための飛行訓練の際、パイロットの判断ミスにより、僚機が撃ち落とされたというシミュレーション結果となった時、その彼らに問いかけた言葉です。

このシーンを見た時、ニューヨーク州にあるウエストポイント(米国陸軍士官学校)でリーダーシップについて学んだ際、戦地の第一線から戻ってきたばかりの将校から聞いた話を思い出しました。

米国陸軍の部隊を率いるリーダーの一人であるこの将校の方にとっては、作戦遂行における判断を誤った場合、作戦の失敗だけでなく、部下達が命を失う危険に晒してしまうことになり、この映画の問いかけが、まさに現実となるのです。

当時、私自身が会社組織のリーダーの一人として求められる責任と重圧に対し、どのように自分自身をマネージしていけばいいのか、と試行錯誤していた時でしたので、この将校の方から話を聞き、自分の悩みなどなんて些細なことか、と感じたことを覚えています。

自分の場合は、仮にリーダーとしての職責を全う出来なくても、最悪、自分が職を失うだけのことであり、同僚やチームメンバーである部下を「死」に至らすようなことはなく、その背後にいる家族に多大な精神的、経済的な被害を与えることもありません。

多くの事を学んだウエストポイントでの経験は、今振り返ると、その時の自分にとって、リーダーとしてのメンタル面でのブレークスルーの一つになったと思います。

「いかにリーダーとなれる人材プールを増やしてくか」は、企業が持続的な成長を実現するために欠かさせない重要課題の一つであり、これまでの管理職であるマネージャーから一次関数的な延長線上を進んでも、リーダーに到達することはありません。そこには非連続の大きな段差が存在し、「leap」つまりジャンプが必要です。

リーダーの育成は企業経営にとって継続的な投資が必要であり、時間軸を長く持ち、リーダー候補者に対し、様々な研修に加え、意図したチャレンジングな職務経験としてのストレッチアサインメントを与えていくことが非常に重要なのです。

相原 滋樹Shigeki Aihara

ジュピター・アンド・カンパニー株式会社 
代表取締役

ゴールドマン・サックス証券会社にて20年間勤務し、同社アジアパシフィック担当財務責任者を務める。2011年ジュピター・キャピタル・マネジメント株式会社(当時)を設立。RIZAPグループ株式会社財務戦略のサポートに従事し、2018年株式会社ウイルグループ執行役員CFOに就任。2021年株式会社お金のデザインChief Strategy Officerに就任。

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