仕事の選択 〜リスク・リターンの考え方〜

「相原さん、リスクがあるのに、よく新卒で外資系証券に入りましたね」

時々、未だに多くの方から尋ねられる質問です。

私はあえて、「そのリスクって、何ですか?」と、どのような答えが返ってくるか分かった上で聞き返します。すると、尋ねた人たちはたいてい一瞬驚き、怪訝な表情で、「だって、クビになるリスクが高いですよね」とおっしゃいます。

このように、日本において多くの人たちが、就職、転職、仕事の選択において気にするリスクは雇用のリスクです。つまりJob Securityについてです。

確かに、外資系証券は日本の大手企業、金融機関に比べて、雇用のリスクは相対的に高かったでしょう。しかし、就職、職業の選択において、様々なリスクが存在していることを、人々は認識するべきであり、雇用のリスクは、その中の一つに過ぎないと理解することが重要であると思います。

雇用のリスクについて言えば、そのリスクがあることを前提に、覚悟を持ってそのリスクを積極的に取りにいき、日々、一生懸命学び努力をしていけば、それは自分でコントロール、マネージ出来るものなのです。

そして、その取ったリスクに対して、自分が求める経験、スキル、報酬、人々との出会いやライフスタイル等の様々なリターンを得られることが可能となります。

私が就職するにあたって、最も取りたくなかったリスクは、20代の時に、自分がやりたい仕事、関わりたい仕事が出来ないリスクでした。

外資系証券の場合、新卒でも就職の際、入社後、自分が従事する業務が明確な部署別採用で、今で言うところのジョブ型雇用です。一方、その当時の日本の大手企業、金融機関のほとんどが、入社後、自分が何の仕事に就くのかについて自分では決めることは出来ず、その企業の人事部という第三者に決められてしまいます。

自分自身の仕事についての「選択の自由」が無いリスク、言い換えれば、自分のEmployabilityを高められないリスクを、私は最も取りたくなかったのだと思います。

そして、自分のEmployabilityを高めることは、同時に、Job Security、つまり雇用のリスクを削減することに繋がります。所属する企業と雇用されている自分との関係において、自分のバーゲニングパワーが大きくなるからです。

2022年に発表された人材版伊藤レポート2.0においても、その趣旨が謳われています。

就職、仕事の選択において、自分がどのリスクを取り、どのリターンを求めるのかを、各個人が主体的、自律的に向き合うことが重要であり、その点においては、年齢も関係ないと思います。

相原 滋樹Shigeki Aihara

ジュピター・アンド・カンパニー株式会社 
代表取締役

ゴールドマン・サックス証券会社にて20年間勤務し、同社アジアパシフィック担当財務責任者を務める。2011年ジュピター・キャピタル・マネジメント株式会社(当時)を設立。RIZAPグループ株式会社財務戦略のサポートに従事し、2018年株式会社ウイルグループ執行役員CFOに就任。2021年株式会社お金のデザインChief Strategy Officerに就任。

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