映像はウソをつけない 〜フジテレビ謝罪会見に見る、企業文化の重要性とその根幹〜

「映像はウソをつけない」

私が若い頃、役者の勉強をしていたとき、稽古中に演技の先生から言われた言葉です。

「これからは映像技術がますます進歩して、本当に『映像の時代』になる。もしあなたの顔が映画館の大きなスクリーンで“どアップ”になったとき、少しのごまかしでも観客にはすべて見透かされてしまうよ。」

先日行われた10時間に及ぶフジテレビ経営陣による謝罪会見の映像を見ながら、ふとこの言葉を思い出しました。

役者が舞台やカメラの前で「演技」をすることと、企業トップが記者会見の場で話すことは、一見まったく異なるように思えます。しかし、「カメラを通して大勢の視聴者に表情や言動を注視されている」という点では同じです。特に謝罪や説明を行う場面では、発せられる言葉の真意や誠意の有無まで、映像を通して細部まで見抜かれてしまう時代になりました。

さらに、いまやスマートフォンの普及により、映像はSNSやニュースサイトを通じて何度でも繰り返し再生され、誰でも好きな時に好きなだけ視聴できます。もはや映像のクオリティを超えて「企業やトップの本音」までも、視聴者には容易に伝わってしまいます。

しかし、これは「表情の演技力を高めよう」という話ではありません。

トップがいくら言葉を取り繕っても、根底にある「企業としての姿勢」や「本当に誠意を持って問題解決に取り組んでいるか」といった“中身”が伴っていなければ、映像にはそれが必ず映し出されてしまいます。

このような不祥事や問題が起きたときのトップ会見は、その企業が日頃から培ってきた企業理念や企業文化の真価が試される場といえます。日常的に根付いている社内倫理や顧客への姿勢は、いざという時に取り繕えるものではなく、映像という媒体は、その企業の本音を余すところなく映し出します。

改めて、企業トップが映像を通じて示す言動がどれほど重要か、そしてその根底には日々の企業文化の在り方があることを、強く認識した10時間でした。

相原 滋樹Shigeki Aihara

ジュピター・アンド・カンパニー株式会社 
代表取締役

ゴールドマン・サックス証券会社にて20年間勤務し、同社アジアパシフィック担当財務責任者を務める。2011年ジュピター・キャピタル・マネジメント株式会社(当時)を設立。RIZAPグループ株式会社財務戦略のサポートに従事し、2018年株式会社ウイルグループ執行役員CFOに就任。2021年株式会社お金のデザインChief Strategy Officerに就任。

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