生成AIは自分の鏡

生成AIを使っていると、引き出せるアウトプットの質は「自分次第」だなと強く感じます。

時々、周囲で「生成AIの回答は役に立たないよ」と嘆く方もいますが、多くの場合、それは生成AIの問題というより、ユーザー側である私たちの問題だと思います。現状の生成AIは、人間とは異なり、曖昧さを「忖度」してくれる能力には限りがあるので、曖昧な指示を出せば、その曖昧さがそのまま跳ね返ってきます。

ユーザー側の問いかけの質、言語能力や論理的思考力、情報整理力が映し出されるので、ある意味、残酷なビジネスパートナーです。

「生成AIは自分の鏡」

この構図は、弁護士やコンサルタントに依頼するときと似ています。どんなに優秀な専門家でも、依頼内容が曖昧なら大まかな答えしか返ってきません。社会人駆け出しの頃、曖昧な相談依頼をした際、弁護士の方から「法律の専門家である私から、何を判断してほしいのか、明確に、具体的に質問してください。」と言われたことを思い出します。

自分の論点を整理し、必要な情報やゴールを明確に示すほど、生成AIの能力を最大限に引き出せることは、人間の部下に仕事を依頼するときと通じることで、「自分ごと」として責任を持ち、問いを設計する姿勢が重要だと改めて思います。

また、「生成AIとの対話」は、同時に「自分自身との対話」でもあります。「問い」の精度を高めることは、自分の思考力や問題設定力を磨くことでもあると思います。

しかし、最近は、AIエージェントの進化が加速しており、現在ユーザー側に求められている言語能力や論理的思考力といった要素もAIがサポートしてくれる世界が、すぐそこに来ているのではいかと感じます。今も、Deep Researchのように、指示が曖昧だと要点を再確認するステップを自動で提示してくれるツールも登場しています。

これから半年後、一年後には、さらに違った世界が広がっているのではないかと思います。

今後は、人間の言語能力や論理的思考力の価値が相対的に下がり、代わりに人間の付加価値を別の領域へシフトさせていく必要に迫られるようになるかもしれません。そのような流れの中で「人間がどこに価値を見いだすのか」という問いを続ける姿勢こそが、これからのビジネスや社会を切り拓いていく鍵になると感じますし、その問いに終わりはないと思います。

相原 滋樹Shigeki Aihara

ジュピター・アンド・カンパニー株式会社 
代表取締役

ゴールドマン・サックス証券会社にて20年間勤務し、同社アジアパシフィック担当財務責任者を務める。2011年ジュピター・キャピタル・マネジメント株式会社(当時)を設立。RIZAPグループ株式会社財務戦略のサポートに従事し、2018年株式会社ウイルグループ執行役員CFOに就任。2021年株式会社お金のデザインChief Strategy Officerに就任。

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